手帖の切れ端

舞台作品の備忘録です.ライブ配信の視聴がメインですが,稀に劇場にも足を運びます.

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」2025年3月 場面別の感想Ⅲ

宝塚歌劇団花組博多座公演ミュージカル「マジシャンの憂鬱」の場面別の感想Ⅲ

 

↓場面別の感想Ⅰ(S1~S6)

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」2025年3月 場面別の感想Ⅰ - 手帖の切れ端

↓場面別の感想Ⅱ(S7~S12)

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」2025年3月 場面別の感想Ⅱ - 手帖の切れ端

↓皇太子妃の事故死周辺の感想

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」① 2025年3月 - 手帖の切れ端

↓宝塚月組初演版の感想

宝塚月組「マジシャンの憂鬱」2007年 - 手帖の切れ端

 

博多座内の撮影スポット.舞台から見た客席.

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S13 カタコンベ

 マレークの衣装が桃色の謎デザインだったのはアデルハイドの趣味だろうか?月組版の青白い衣装の方がカタコンベの場面に合っていたような.花組版の精霊の衣装には白地に黒カビか墨汁の汚れのような模様があった.

 工作員に連行されたシャンドールとヴェロニカは教会の地下のカタコンベに閉じ込められた.髑髏を怖がるヴェロニカと,「髑髏がたくさん!マジックの道具!」などと言って興味津々にヴェロニカを振り回すシャンドールが可笑しい.月組初演版は髑髏が山積みで,明らかに人間サイズでない頭蓋骨もあり,雑多で墓守夫妻の仕事もがさつだなーと思っていたが,花組版では髑髏は棚に割と丁寧に陳列され,人間サイズのものしか置いていなかったため,墓守夫妻も几帳面に仕事しているようだった.

 シャンドールが出口を見つけるまで動かずに待っているというヴェロニカを「小説ではこういう時に一人になった者は必ず・・・」と脅かしたり,足に引っかかった骨に驚いて腰が抜けたヴェロニカに「(この骨は)友達ですか?」と揶揄ったりするが(前の場面でヴェロニカの「友達もいませんし」を聞いたあとで「友達ですか?」と骨で遊ぶのはシャンドールもかなりいけず),異常な怖がり様に,彼女の背中に手を当てて落ち付かせようとしたり,落ち着くまでここにいようかと言ったり,なんだかんだで根本は優しいのだ.自分の腕に掴まって目を閉じるように言って,1度何かの拍子にヴェロニカが手を離したときは,また掴めるように自分の腕をさりげなく差し出し,うっかり目を開けたヴェロニカが怖がって腕を強く掴んだときは彼女の様子を確かめるようにちらっと目をやる・・・という細かい芝居が良い.

 この「離れない離さない」の場面,月組初演版では手を取って歩くシャンドールとヴェロニカの距離が段々と近くなり,2人の心の距離が近づいたことを暗示しているようで,このバージョンも好きだ.

 花組版ヴェロニカの紫色のドレスが遠目にはワラジムシに見える.シャンドールの腕にしがみつくヴェロニカがびっくりして丸まったワラジムシのようで非常に可愛かった.

 花組のアデルハイドは近所の子供から恐れられる怖いおばあさん(実は優しい)のようでもあり,カタコンベに潜むラスボスのようでもあった.多分,声も力強く安定感があり,夫シュトルムフェルド(高翔みず希)より恰幅がよく,月組版アデルハイド(矢代鴻)のようにビクビク,おどおどはしていないからだろう.月組版はシャンドールとヴェロニカの間にアデルハイドが割って入っている場面がコミカルだったが,花組版はホラーが勝った印象.シャンドールもヴェロニカも,アデルハイドの歌声を「風の音」,「化け物が歌っている」と言い,手を「しわくちゃ」,「干からびた」など言いたい放題.ところで,アデルハイドはシャンドールとヴェロニカの間に割って入るときに何故「離れない離さない」と一緒に歌っているのだ?

 花組版アデルハイドは頼りがいがありそうで,美味しい食べ物も暖かい寝床も与えてくれそうだし,この人の保護下で匿ってもらえるなら幽閉されるのも悪くない・・・とやや危ないことを考えてしまった.

 

S14 シャンドールの屋敷

 シャンドールとヴェロニカが教会に行ったきり戻ってこないので,居候5人と侍女のシャーロットとエヴァは心配し,作戦会議をする.そこへ司祭シャラモンがやってきて,2人が誘拐されたと今更なことをビックニュースのように伝える.居候らの「そんなこととっくに知っとるわ!」と言いたげな無言の演技が上手い.それでも,アデルハイドとシュトルムフェルドの証言により,シャンドールとヴェロニカと皇太子妃が墓地にいることが分かり,皆で救出に向かう.

 ここで,エヴァが初めて喋り,皆を驚かせるが,エヴァとペアになっているシャーロットも必要最小限しか話さない,少し人間味のないキャラクターなので,エヴァだけが話さないキャラクターという印象は薄い.これは月組初演版から思っていた.(しかし,エヴァ役の三空凜花は可愛い.彼女の地元の長崎県大村市を表敬訪問したのが最近ニュースになっていたな・・・と思い再度ニュースの動画を見ようとしたら・・見られない!?つい数日前のニュースなのに何故?動画には三空のファンの高校生と話す場面もあった.)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1831603?display=1

 

S15 皇太子邸

 救出され,身なりを整えた皇太子妃が皇太子に再開する.シャンドールとヴェロニカも無事に救出され,シャンドールは皇太子と共に犯人を炙り出す計画を練る.事件解決はすぐ目の前に!

 この場面の感想は皇太子妃の事故死周辺の感想に書いたので割愛.↓

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」① 2025年3月 - 手帖の切れ端

 

S16 シャンドールの屋敷 庭

 1人になったヴェロニカが,事件解決後に来るべきシャンドールとの別れがつらいと歌う.その歌に被さるように,後からシャンドールが歌い出すと,曲がガラッと明るくなる.この2曲目のデュエットも美しい.この後の台詞と歌が混じるような「本当ですよ~♪」等のやり取りもミュージカルらしくて好き.

 タイトルにもなっている「マジシャンの憂鬱」とは,最初は厄介な事件に巻き込まれ命を狙われ,自由を無くしたことが「憂鬱」だったが,いつしか皇太子やヴェロニカらに嘘の透視をし,己を偽り続けることが心苦しくなり「憂鬱」になったのだろう.シャンドールはヴェロニカや皇太子らの心を救ったが,ヴェロニカや皇太子といったピュアな人々に接してきたことで彼自身の心情も変化したのだと思う.

 透視は偶然当たっただけと真実を打ち明け,「怒りました?」と問うシャンドールに,ヴェロニカは「素晴らしい結果を導いたことは事実です.」と彼の嘘も真実も全て受け入れる.そして,シャンドールは嘘をつくことに「疲れました」と言って,透視はやめると言うが,ヴェロニカは「どうであれ,私はあなたに救われた」と返す.この2人のやり取りが純粋そのもので,観客の私は耳がムズムズするが,好きな場面だ.

 

S17 宮殿内 ホール

 犯人はシャンドールがカタコンベから救出された事実を知らないはずなので,舞踏会にいきなり彼が現れたら動揺するだろうということで,シャンドールが華麗に登場!この時,シャンドールの背後の照明が眩しすぎて,シャンドールの姿を直視できない.「恐れは全てに先んじる」らしく,挙動不審な親衛連隊司令アンドラージュ(翼杏寿)と財務大臣バルトーク(涼香希南)を皇太子妃誘拐の犯人と特定,逮捕.勧善懲悪.

 この捕物の辺りに疑問を持ってはならぬ!と自分に言い聞かせる.「とにもかくにも,シャンドールの推理能力は凄い!奇跡の男だから犯人が分かったのだ!!」という無理矢理なロジックで自分を納得させるしかない.

 この場面の感想も皇太子妃の事故死周辺の感想に書いたので割愛.↓

宝塚花組「マジシャンの憂鬱」① 2025年3月 - 手帖の切れ端

 

 犯人らが退場した後,ついに皇太子妃マレークが階段から降りてくる.ここで直ぐに盆が回り,シャンドールが去る時にシャーロットとエヴァがお辞儀をするのが何気に好き.

 月組初演版では,宮殿の捕物の場のシャンドールは白い燕尾服でマントは羽織っておらず,次の中庭の場面に移る時に,ヴェロニカがマントとシルクハットを持ってきてマントをシャンドールに着せていた.花組版では,捕物の場で既にシャンドールはシルバーorグレー系の燕尾服+マント+シルクハットのフル装備で,マントを華麗に翻し踊っていたんだった!今思い出した!永久輝せあのマント捌きが綺麗だった.

 

S17b 宮殿内 中庭

 事件が解決し,シャンドールはしばらくヨーロッパを旅するつもりだとヴェロニカに告げる.皇太子妃は「妹を亡くして1人残るのも辛かろう」とヴェロニカを自由にさせたため,ヴェロニカは故郷ウェールズに帰り,妹の墓参りをするつもりだとシャンドールに告げる.

 月組初演版ではヴェロニカがくしゃみをして,シャンドールが着ていたマントをヴェロニカにかけていたが,花組版では,ヴェロニカが寒そうに腕を擦り,それを見たシャンドールが彼女にマントをかけるという演出に変わっていた.どちらのバージョンもシャンドールの紳士的な面を表していて好きだが,花組版の方がよりシャンドールの洞察力の高さが分かり好みだった.マントをかけてもらって驚きながらも,嬉しそうにマントに包まる(というより「潜る」くらいマントに埋もれている)星空ヴェロニカもめんこかった(似非博多弁).星空ヴェロニカは中庭に現れたときから,それまでより表情も声も柔らかくなっていた.事件解決により肩の荷が下り,シャンドールによって心が救われ,彼女はついに精神的にも自由になれたことが表情や声からも感じられる.

 

 2人の行先がヨーロッパなので,旅の起点をウェールズにして一緒に行きませんか?同行するのはウェールズまででも良いし,それ以前に嫌だと思ったら別行動にしても良いですよという提案をしたシャンドールに対する月組初演版の彩乃ヴェロニカの「行きます!!」,「やります!!」,「はい!!」という返答は「!」マークをたくさん付けたくなるほど勢いよく全力だった.ヴェロニカを旅に誘う瀬奈シャンドールが良い意味で軽妙でチャラい(←他の語彙が思い浮かばない)のもあって,この場面の月組初演版の2人はラブコメディーとしてテレビドラマ化されそうな雰囲気があった.

 同じ場面,花組版の星空ヴェロニカも基本は前のめりだが,シャンドールに「また当分一緒ですね」と言われ「はい.」と答える時がふわっと緊張が解けたような嬉しそうな表情と声をしていたのが印象的だった.花組版の永久輝シャンドールは月組版よりチャラさは控えめで,ヴェロニカを旅に誘うのも単なる色恋絡みでなく,ヴェロニカが無事に故郷に戻り双子の妹の墓参りをするのを見届けたい気持ちもあるような気がした.勿論彼女はフィジカル面も意思も強いけれど,弱い面も知った今では放っておけないのだろう.シャンドールが「旅のマネージメントをして欲しい」と言うのも,宮廷での任務を解かれた彼女に新たな仕事や生き甲斐を与えることで,彼について生きやすくする意味もあったと思う.

 花組版では,この旅の計画を話す時に,シャンドールとヴェロニカがようやく1つの長椅子に2人で隣り合って座る.長椅子(下手側)の反対側(上手側)にわざわざ1人掛けの椅子が2つ離れて配置されているが,そちらの椅子には目もくれず,長椅子に2人で座ることを無意識に選んでいる.椅子に座るか立つか,椅子の距離,座る位置でヒーローとヒロインの心理的な距離が次第に縮まっていく様子を自然な流れで表現している.距離感や関係性の変化を丁寧に描いているからこそ,ラストのキスシーンに唐突な感じがしないのだ.

 

 「マジシャンの憂鬱」の名台詞,「好きですよ,あなた.」,「私ですか?」,「あなたは?」,「私も好きです.」も台詞自体は同じでも,月組初演版と花組版で受ける印象は異なり,名作の再演の面白さを実感した.月組初演版はヴェロニカが「私も好きなんだ!」と気づいた衝撃が勢いとなって「好きです!!!」と真面目に真剣に全力で告白していた.シャンドールが100の思いを告げるなら,ヴェロニカは常にそれを上回る200の思いで愛情を返しそうだ.

 花組版では,この感情が「好き」なのだとやっと気づいたことへの安堵のような「私も,好きです・・・」だった.何となく花組のヴェロニカには度々(特に「息苦しい」と言うたびに),「それは恋ではないのか?(by メリメ@激情)」と助言したくなる.ヴェロニカの答えを待つときのシャンドールの何とも表現し難い表情も好きだ.

 

 花組版には月組初演版にあったショー部分はなく,シャンドールがマントごとヴェロニカを引き寄せてキスをし,旅に出る2人の後ろ姿を見送りながら幕が下りる.これは花組版のオリジナル.月組初演版と違ってオーディエンス(←殿下ら)がいないので,完全に2人だけの世界だ.幕が下りる直前に,ヴェロニカがシャンドールの忘れ物のシルクハットを取りに戻り,またシャンドールの元へ駆けて行く.素敵な大人の男性で余裕があり数々の色恋を経験してきたであろう(多分)シャンドールでさえも,自分からしたキスの直後で動揺して帽子の存在を忘れていたのだろうか.反対に,初心なヴェロニカが意外にも落ち着いているのがバランスが取れていて良いなと思ったり・・・.

 屋敷の主人シャンドールが旅に出た後も,居候5人は屋敷の管理をするとか何とか言って,あの屋敷に棲みついているような気がする.何なら,屋敷の家賃・光熱費はシャンドールが支払い続けて,エジプシャンホール等で巡業して稼いだお金を居候らに小遣いとして仕送りしていそうだ.そして,透視の噂も消え失せた頃にヴェロニカを連れてふらっと帰ってきて,また屋敷で皆でわちゃわちゃと楽しく過ごして欲しい.

 

kageki.hankyu.co.jp

(以下,公式ホームページより引用)

ミュージカル
『マジシャンの憂鬱』
作・演出/正塚 晴彦

【会場】博多座(福岡県)

【公演期間】    2025年3月8日(土) ~3月30日(日)
【主な配役】

シャンドール :永久輝 せあ
ヴェロニカ:星空 美咲
シュトルムフェルド    高翔 みず希
アデルハイド    凛城 きら
シャラモン    紫門 ゆりや
ラースロ    羽立 光来
ロラーンド    紅羽 真希
イローナ    凛乃 しづか
ボルディジャール    聖乃 あすか
ジグモンド    一之瀬 航季
時計屋    和 礼彩
アンドラージュ    翼 杏寿
バルトーク    涼香 希南
ヤーノシュ    侑輝 大弥
コルネール    太凰 旬
シャーロット    鈴美梛 なつ紀
エヴァ    三空 凜花
スカローシ    南音 あきら
ギゼラ    朝葉 ことの
ツェツィーリエ    詩希 すみれ
レオー    天城 れいん
マレーク    美羽 愛
ネクチュイ    慧那 まや

【出演者一覧】

花組】紫門 ゆりや, 羽立 光来,永久輝 せあ,紅羽 真希, 凛乃 しづか,聖乃 あすか,一之瀬 航季,和 礼彩,翼 杏寿,涼香 希南,
侑輝 大弥,太凰 旬,鈴美梛 なつ紀,三空 凜花,南音 あきら,
朝葉 ことの,詩希 すみれ,琴美 くらら,颯美 汐紗,天城 れいん,
美羽 愛,珀斗 星来,青騎 司,星空 美咲,湖華 詩,伶愛輝 みら,湖春 ひめ花(※),  美遥あゆ, 慧那 まや, 咲良 さき,瀬七波 いろ, 華波 侑希, 滝 みらい, 美翠 せいら, 華路 らら,輝涼 じゅん, 花綺 ちさと, 夢希 舞香          
【専科】    高翔 みず希,凛城 きら

○(花組)湖春 ひめ花
※体調不良のため、3月19日(水)12時公演より休演いたします。

 

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