手帖の切れ端

舞台作品の備忘録です.ライブ配信の視聴がメインですが,稀に劇場にも足を運びます.

宝塚花組「エンジェリックライ」① 2024年9月~12月

 「エンジェリックライ」は,大劇場公演千秋楽のライブ配信を視聴後,東京宝塚劇場にて観劇し,新人公演をライブ配信で視聴している.当たり前かもしれないが,映像での視聴と劇場での観劇では客側の視点も感想も異なってくる.新人公演も含め3回も同じ作品を見ていると話の展開や台詞もだいたい覚える.

 まず,この作品はストーリーに大きな矛盾がないところが良い.天使や悪魔の出てくる可愛らしく単純な物語に見せかけて話の骨組みはしっかりしている.アザゼル,エレナ,フェデリコ,フラウロスというソロモンの指輪の巡る面々に指輪を手に入れる動機や事情があり,それぞれの思いが交差して騙し合い,親子愛,夫婦愛,天使と人間の禁断の恋などの関係性が幾重にも重なるようにして描かれている.しかも,これを1幕(約1時間半)で完結させるのは割と難しいことなのではないかと思う.

 強いてやや首を傾げた箇所を挙げると,アザゼルが何故最後までソロモンの指輪を狙うのかという部分だけだが,これも最後まで見ていると納得する.堕天後のアザゼルは天界に帰るために,ソロモンの指輪の適合者に「アザゼルよ天使の力を取り戻せ」と命令してもらう必要があり,そのために指輪を狙うエレナに協力する.その後,ラファエルがアザゼルに協力するために天界から派遣され,何やかんやでアザゼルはラファエルの力で戸籍台帳を盗み見るために天界に一時的に戻れている.それなら,ソロモンの指輪は要らないのでは?と思っていたが,最後の方で,天界に戻るには天使の称号を許してもらう(=人間界での修行の成果を認めてもらう?)必要があることが仄めかされており,堕天したままで天界への正式な復帰はあり得ず,やはり最後までソロモンの指輪回収と事態の収拾のためにエレナに協力する必要があったのだ.それに第一,アザゼルがラファエルに頼んで天界へ戻れることに気づいたからといって,自分は指輪略奪計画から一抜けして,悪魔に囚われたエレナを見捨てるとは思えない.

 思えば,エレナが天使(アズラエル)と人間(フェデリコ)の混血と仄めかすような描写もある.まず,エレナが易々と悪魔に操られないのは天使の血(と謎に魔術に耐性のある父親からの遺伝)によるものと思う.悪魔フラウロスに囚われたエレナは儀式に及んでもフラウロスに抵抗し,黒ヤギに扮した人物が媚薬(想像)入りのグラスを運んでくる.黒魔術の及ばない者へは最終的に薬の力に頼るしかないのかもしれない.

 加えて,ピンクやオレンジなど色々なウィッグを使って変装するエレナだが,フラウロスに囚われ儀式用の恰好にされてからは母親譲りの淡い金髪になるので,これが変装なしのオリジナルの髪色なんだろう(これは本公演の星空エレナのみで,新人公演の初音エレナは最後の水色ドレスの場面はアズラエルより若干暗めの落ち着いた髪色をしていた気がする.本公演とは解釈が違うのか?).最後の清楚な水色のドレスはアズラエルが人間の娘ヴィータとして人間界へ視察をしていたときの服装に似ている.それ以外のトレジャーハンターとしての変装時のファッションセンスは父親譲りだろうと想像する.ちなみに,儀式用の赤と黒のロングドレスはフラウロスやルーナ,ファルファッラ一味の嗜好と思われる.

 登場人物の中で割と好きなのがマリオ警部だ.マリオ警部が「エンジェルシーフは悪魔のような男に違いない」と予想を語った時点では,観客はエンジェルシーフがエレナと知っているので,やれ鈍腕警部の戯言と気にもとめない.しかし,後で(フェデリコらに嵌められた)エンジェルシーフとして悪魔が捕まり,「やはり,私の分析通り悪魔のような男だった!」(by マリオ警部)と伏線を回収させるのも脚本として上手い.

 

kageki.hankyu.co.jp

 

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ファンタジー・ホラロマン

『エンジェリックライ』

公演期間 宝塚大劇場:2024年9月28日(土) ~11月10日(日)

     東京宝塚劇場:2024年12月7日(土) ~2025年1月19日(日)

スタッフ

作・演出:谷貴矢,作曲・編曲:太田健,音楽指揮:佐々田愛一郎,振付:御織ゆみ乃・若央りさ・港ゆりか,擬闘:清家三彦,装置:國包洋子,衣装:加藤真美,照明:氷谷信雄,音響:秀島正一,小道具:加藤侑子,映像:溝上水緒,歌唱指導:西野誠,メイク監修:CHIHARU,演出助手:西川日向子,振付助手:鶴美舞夕・井上尚子,擬闘助手:清家一斗,装置補:川崎真奈,衣装助手:渡邊佳菜,照明助手:平居優美,音響助手:澁谷博,舞台進行:花山紅葉(宝塚大劇場)・鴨居千奈(東京宝塚劇場),稽古ピアノ:植田浩徳

キャスト ()内は新人公演のキャスト

アザゼル:永久輝 せあ (美空 真瑠)

エレナ:星空 美咲 (初音 夢)

フェデリコ:凪七 瑠海(夏希 真斗)

アズラエル:美風 舞良 (美羽 愛)

天帝:紫門 ゆりや(天城 れいん)

情報屋トト:羽立 光来(珀斗 星来)

ミケーレ神父:紅羽 真希(青騎 司)

ラファエル:綺城 ひか理 (遼 美来)

マスター:峰果 とわ(稀奈 ゆい(※))

レベッカ:凛乃 しづか (七彩 はづき)

ディレクター:高峰 潤 (伶愛輝 みら)

アマンダ:糸月 雪羽    (湖華 詩)

ラウロ/フラウロス:聖乃 あすか    (鏡 星珠)

ダンテ:泉 まいら    (慧那 まや)

マリオ警部:一之瀬 航季    (宇咲 瞬)

レオン:和 礼彩    (瀬七波 いろ)

ルカ:愛乃 一真    (華波 侑希)

カメラマン:龍季 澪    (美翠 せいら

ティト:翼 杏寿    (滝 みらい)

ジュリオ:侑輝 大弥    (月翔 きら)

マフィア:太凰 旬    (纏 涼)

レダ:鈴美梛 なつ紀    (常和 紅葉)

ヴィータ:朝葉 ことの    (花海 凛)

マフィア:涼葉 まれ    (輝涼 じゅん)

サリエル:希波 らいと    (希蘭 るね)

ウタエル:詩希 すみれ    (湖春 ひめ花)

ファビオ:天城 れいん    (光稀 れん)

ルーナ:美羽 愛    (真澄 ゆかり)

ウタエル:美空 真瑠    (風美 はる帆)

オドレル:夏希 真斗    (月世 麗)

ファルファッラ:初音 夢    (美遥 あゆ)

オドレル:七彩 はづき    (翠笙 芹南)

ファルファッラ:花海 凛 (咲良 さき)

※当初出演予定の咲乃深音は、本公演には出演いたしません。

■『エンジェリックライ』

レダ

咲乃深音に代わり、鈴美梛なつ紀が務めます。

※新人公演では、配役名を次の通り変更いたします。

マスター→ミストレス

(公式ホームページより引用)

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